シルトの梯子/グレッグ・イーガン
久々にSF読みしました。 グレッグ・イーガンの「シルトの梯子」。
実は一度、原書版を買っていたんですよね。 ただ、難解すぎて挫折してました。
で、いつの間にか邦訳されていたので読んでみたんですが・・・
いやあ、相変わらずのイーガン節全開。 超絶難解ハイパーハードコアSFで頭クラクラ来ました。
物語は今から2万年後の遠未来。 相対性理論を更に進めた、「量子グラフ理論」の研究が進んでいる未来。
現実の空間とは異なる「新真空」と呼ばれる物理現象の研究をしようとしていた、科学者のキャスと<ミモサ>と呼ばれる宇宙ステーションにいる身体を持たない非実体主義者達で実験を行っていた。 本来は6兆分の1秒で消滅するはずだったこの空間が、消滅せずに何故か膨張を続けてしまう。
ここまでが第一部の話。
第二部では、光速の半分の速度で膨張を続ける新真空(ミモサ空間とも呼ばれる)が、現実の宇宙空間の惑星や人々を次々と浸食して、飲み込んで行っている状態が数百年継続している。 この空間の境界面から数kmの所に「リンドラー」と呼ばれる宇宙船が建造され、拡張する空間にあわせて(つまり光速の半分の速度で!)移動している状態。
研究者たちはこの「リンドラー」に集まり、膨張するミモサ空間を何とかして封じ込め被害の拡大を抑えようとする「防御派」と、膨張する空間と何とかして共存していく道を模索しようとする「譲渡派」に分かれてそれぞれ研究や実験を行っている。
第二部の主人公であるチカヤは「譲渡派」としてリンドラーに乗り込む。そして、ミモサ空間と対峙する・・・ リンドラーでチカヤは古い友人であるマリアマと出会う。 マリアマとは幼少期にちょっとした恋仲であったが離ればなれになってしまい、約四千年ぶりに出会う。
「譲渡派」であるチカヤに対して、マリアマは「防御派」として活動を続ける。 お互いに主義・主張に対立は有りつつも様々なアプローチでミモサ空間の研究を続けるが、やがて「防御派」の中に過激派的な一群が現れ「リンドラー」の破壊活動を行ってしまう。
そして、なんやかやあってチカヤとマリアマはミモサ空間の中に入り込むことになる。 そこで二人が見たものは・・・
イーガン作品らしく、相変わらずぶっ飛び設定が多い
殆どの人類は、自分自身をデータ化しており数百年〜数千年生きるのが当たり前になっている
データ化された人類は「クァスプ」と呼ばれる量子コンピュータ?に、「ある時点までの自分」を保存しておくことが出来、実体が何らかの要因で死を迎えたとしてもクァスプから復活できる
星系間を移動する際はデータで移動し、実体化が必要な場合は各拠点で身体を作り、そこに自我が送り込まれる。
ただ、「非実体化主義者」と言う身体を持たないデータのみで生きている人も居る
逆に、古来からの身体を捨てずに冷凍睡眠を繰り返しながら宇宙を旅する「アナクロノーツ」と言う人たちもいる
イーガン自身による架空の物理学理論「グラフ理論」に関する説明
データ化された人類には「性別」の概念は殆ど無くなっているが、文中の表現では「彼」「彼女」などの一応性別を意識させるような表現にはなっている。 イーガンの作品としては珍しく割と恋愛が全面に押し出された部分があるけど、はっきり言ってマリアマがこれ以上無いほどのツンデレww
ストーリーのプロット自体は比較的シンプルだけど、そこに散りばめられた量子力学、天文学の要素が濃すぎるw 多分技術的な説明については1/10も理解できていないと思う。
また、データ化したことによって長い時を生きる様になった人類が「自分自身のアイデンティティ」をどうやって保つか?と言ったイーガン作品に共通する「自我への問いかけ」は今回も健在。
とにかく、非常にハードなSFで真面目に一つ一つの単語を理解しようとすると猛烈に時間がかかり疲れるので「分からないところは読み飛ばす」位の勢いが無いととても読み切れません。
あまりに難解で、読んでいる最中に何度も眠くなってしまいましたが何とか読み切りました。
かなり読む人を選ぶ作品ではありますが、その分読み応えも十分にあります。
ただ、あまりにも読むのに疲労してしまったので、次に読む本はもう少し軽めの物にしようw