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(書評) ゼンデギ/グレッグ・イーガン

 

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

 

 

以前からファンのグレッグ・イーガンの作品。

マーティンとナシムという二人の主人公の物語が絡み合うストーリー。

 

マーティンはオーストラリア出身の元ジャーナリストでイランの民主化運動を取材していたがそこで起きた体験が元でイランに移住することになる。

一方のナシムはイラン出身だが迫害され米国に亡命。動物や人間の精神や記憶を研究するエンジニアとして成功するが祖国のイランへの思いは募っていた。

 

マーティンは妻を亡くし幼い息子のジャヴィードと二人暮らしをするが、やがて自分が病に冒されていることを知る。自分が亡くなった後、息子を一人残していく事に強い憂慮を抱いていた。

 

ナシムは民主化された祖国へ戻りオンラインゲームを運営する「ゼンデギ」の運営/経営に関わるようになる。

ゼンデギはプレイヤーはHMDのような物を被ってプレイする今風に言えばVRのオンラインゲームであり、プロキシと呼ばれるNPCと関わり合いながら様々なシナリオをプレイする。

プロキシは通常プログラムで決められた応答しか出来なかったが、やがて現実の人間の反応を真似てより人間に近い応答を出来るようになっていく。

 

マーティンはそんなテクノロジに興味を持ち、ナシムに自分のコピーを作れないかと打診する。自分が亡くなった後も息子のジャヴィードを見守る存在としていわば「バーチャル・マーティン」を残したい、と言う事。

 

マーティンは息子にそのことを隠したまま、親子で「ゼンデギ」を楽しむことになるが・・・

 

と言うのが大まかなストーリー。

イーガン作品と言えば、「人間の記憶や精神を完全に電子化し物理的な肉体から解放」みたいな遠未来をテーマが有名だが、この作品は舞台がほぼ現代なのでそれらと比べるとテクノロジーレベルはかなり現実に近い。

この作品が書かれたのは2009年だが、オンラインゲームやVRと言った要素も2017年の現在では身近に感じる。

その為、まだまだ人間の精神を完全に電子化するレベルではなく

「人の反応を学習してその人の行動パターンを習得するAIもどき」

しか実現できない。

 

そこに至るまでの技術的な描写等はさすがイーガンと言えるけど・・・

 

全般的に長めの小説の割に中々ストーリーが進まない。

そしてストーリーの多くを占める「ゼンデギ」内でのゲームシナリオが古代中近東の寓話や神話などを元にした物なので正直日本人には全然馴染みがなくて分かりにくい。

 

実はこの書籍をKindle版で買ったのは2015年頃だけど、読み終わったのは今日。

どうにもこうにもストーリーが面白くなくて中々読み進められなかった。

 

 

マーティンの息子を思う気持ちと、テクノロジーの理想と現実の狭間に打ちのめされるナシムという二本立てのストーリーが特徴だったけど、何かどちらもスッキリとは終わらなかったのでなんとも言えず後味が悪い。

 

イーガン作品好きではあるけどちょっと自分には合わなかったようです。