失踪日記2 アル中病棟/吾妻ひでお
不条理SFマンガでかつて人気を博した吾妻ひでおが、精神を病み、自殺未遂、失踪、そしてアルコール依存症による強制入院に至るまでの経緯をほぼノンフィクションで描いた衝撃の作品でした。
氏独特の客観視点で凄まじい経験をあたかもコミカルであるかのように描くそのシュールさには脱帽しました。今でも読みかえす度に衝撃が走る傑作です。
そして、その疾走日記から8年。前作の後半で少し語られたアルコール依存症患者が治療するアル中病棟での約3ヶ月間にフォーカスして続編がまさかの刊行。
前作がひたすら精神的に病んで堕ちていく様が描かれていて、それこそ猛烈な事件も多かったわけですが、今作はアル中病棟というある意味閉鎖空間でのソリッドシチュエーションな訳で、割と淡々と描かれています。
氏本人は二度とアルコールの誘惑に負けまいと誓い、治療を試みるわけですが、アルコールが完全に抜けきらず、集中できないため小説が読めない、文字が書けない、絵が描けない。
そして様々な事情や環境でアル中になってしまった病棟の患者達の様々なエピソード。
非日常が日常になってしまう恐ろしさ。
冷静に考えると凄まじく陰惨で暗い話になりがちですが、何故か吾妻ひでおの絵柄で語られるとほのぼのとした日常に見えてしまう。
殆どのコマでバストアップを使わずに全身を描くその手法は今時のマンガから比べると手間もかかるし構図が難しい。ただ何故か古臭くない。
前作ほど衝撃は大きくないが、それでも氏の自分をここまで客観的に貶めて、自虐的にマンガのネタにしてしまう技量には本当に恐れ入った。
と、同時に漫画家ってつくづく因果な職業だと思いました。
アル中は一度患ってしまうと、根本的には一生治らない病気だといわれています。
吾妻氏はこれからもアルコールの誘惑と戦い続けるのだと思うけど、是非打ち勝って欲しいと思います。