マルドゥック・スクランブル -排気-
今や「天地明察」で時の人となった冲方丁氏ですが、氏が10年位前に書いたSF作品が「マルドゥック・スクランブル」シリーズ。
これが三部作でアニメ映画化されています。
一昨年の「圧縮」、昨年の「燃焼」に続いて今回の「排気」が三部作の完結編。
毎回欠かさず劇場に観に行っていましたので今回も当然観に行きました。
なんたって原作にどっぷりはまった口なので。
オクトーバー社の元でカジノを経営するシェルの策謀によって命を奪われかけた少女娼婦のルーン・バロット。
生命保護プログラムにより救助され、委任事件捜査官であるネズミ型万能兵器のウフコックと「楽園」出身の研究者であるイースター博士と共にシェルの犯罪を追うために行動することになる。そこにシェル側に雇われたボイルドが立ちはだかる。ボイルドはかつてのウフコックの相棒で、ウフコックを濫用しつくし、お互いの袂を分かった。
「何故自分なのか」を問うことで、自分の存在意義を問い続けるバロット
自分の有用性を示すことで存在する意味を維持し続けるウフコックとボイルドそれぞれの強い思いがすれ違い、対峙し、信頼し、絶望していく。
前作の「燃焼」ではシェルの秘密を追うために彼が経営するカジノに乗り込み、ルーレットやポーカーなどのギャンブルで勝負を挑むところで終わるが、今回はその直後から続いています。
映像では表現しにくいポーカーの緊迫した勝負を、丁寧に、丁寧に台詞と動きだけで表現していく。思わず映像を見ながら文字通り「手に汗を握る」様な感覚を味わった。
最後は単なるポーカーではなく、バロットの思いの全てを賭け、最後の勝負に挑むところは圧巻でした。
ポーカーでここまで「魅せる」とは・・・
正直、原作を読んでいてこの作品がアニメ映画化すると聞いたときに
「カジノのシーンどうするんだろう?普通に映像化しても画的に辛そう」
と思っていたのですが、良い意味で期待を裏切られました。
その後のバロットとボイルドの戦いも含めて、最後まで鳥肌たちまくりでした。
さすがに原作者である冲方丁氏自らが映画の脚本を作っているだけあって、上映時間は60分少々しかないにもかかわらず、原作をうまくまとめているし破綻もしていないし文句なしでした。
「天地明察」で冲方丁氏を知った方には是非「マルドゥック・スクランブル」も読んでいただきたい。
そしてこの映画を見ていただきたい。(前2作は既にDVD/BD化済み)
全ての登場人物にしっかり芯が通っており、それぞれがそれぞれの信念に基づいて「生きて」居るのが分かる、素晴らしい物語です。
オススメ。
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