ハゲタカ劇場版
劇場版公式サイト
以前、NHKで放映されていた金融ドラマ「ハゲタカ」の劇場版を見てきた。
実はドラマ版の存在は知らなくてたまたまテレビをつけたときにやっていたのが最終回でした。
えらく重苦しく、そして暗い、暗すぎるストーリーだったのですが、何か惹きつけるものがあったのを覚えています。
劇場版はそのテレビドラマ版の続編。
日本の政財界の腐敗した癒着構造、生温さに嫌気がさし、日本に見切りをつけ海外で堕落した生活を送る伝説のハゲタカ、鷲津。
その鷲津の元にかつての上司、そして名優でもある芝野が訪れる。
芝野は日本を代表する自動車メーカー、アカマ自動車に雇われ企業再建を目指している。
芝野はアカマ自動車が意図的にどこかの資本により買収を仕掛けられる恐れがあり、鷲津の力を必要としていた。
昨今の激しい経済状況の変化も一部取り入れています。
2時間少しの映画にしてはちょっと要素を詰め込みすぎかな?と言う気はしますがなかなかうまくまとまっていました。
何しろ脚本の構成が素晴らしく、序盤からいきなり緊張感あふれる買収合戦が始まり、クライマックスに至るまでほぼ5〜10分おきにヤマ場がくるため全く途中でだれること無く最後まで一気に見続けられました。
金融・経済ドラマだというのにまるでサスペンスかアクションでも見ているかのような緊張感の連続は素晴らしいとしか言いようがない。
中国、ドバイ、米国などの各国が舞台になりながらもあくまでもメインは日本と言う立場を崩さず、きっちり日本での描写を描ききっています。
経済問題が主題の映画なので、さすがに金融に関する知識が全くない人だと見るのは辛いかもしれませんが普通に日経新聞やWorld Business Satelliteを見て理解できる程度の知識があればそんなに困ることはありません。
それなりにデフォルメはしてあるみたいなので細かいところは気にしなくてもストーリーは理解できます。
ただ、個人的にはクライマックスでの鷲津の「大逆転」の攻勢が若干現実離れしすぎていると言うか、話が出来すぎているように思います。
マクロ経済があんなに簡単に一ファンドごときで簡単に動かせるとは思えない。
そこだけ少し残念でしたが、全体を通してみれば非常に重厚で見応えのある社会派映画といえそうです。
主役の鷲津を演じる大森南朋、そして今回のライバルである劉一華を演じる玉山鉄二、二人の静かな対決
が熱いです。大森さんはまさにハマリ役と言っても良いでしょう。
過去の憂いを抱え、拝金指向の資本主義をどこか冷めた目で見ながら自分もそのプレーヤになっている悲劇、そんな役に大森さんがぴったりはまっているでしょう。
一方の玉山さんは単なるイケメンではなく今回は中国語も話し、過去に秘密を持つ難しい役柄でありながら小憎らしいライバルを演じきっています。
両方とも存在感が凄すぎます。
そして、二人が頻繁に見せる眼鏡の両端を持って位置を整えるあの上げ方・・・・かっこよすぎる(^^;;
どちらかと言えば今回は脇に徹している芝野を演じる柴田恭兵ですが、この人は本当に「熱い台詞」
を語らせると一番ですね。(はみだし刑事情熱系あたりからの伝統か?)
一番最後に芝野がこんな台詞を言います
「日本人の勤勉さ、真面目さは世界に誇れるものだ!日本はまだまだ捨てたものじゃない!」
ベタベタすぎて、臭い台詞ですが、何故か柴田恭兵がこの台詞を言うと嫌みに感じない。
見た後に爽快感も感じないし、何か虚しさを感じる、そんな厭世観漂う映画ですが、たまにはこういう映画を見るのも悪くない。